この記事で分かること
・ヒートショックの意味と、体の中で起きていること
・入浴中の事故の最新データ(令和6年)
・ヒートショックの症状と、起こりやすい人のチェックポイント
・お湯の温度・入浴時間の目安と、今日からできる対策
・血圧の薬を飲んでいる方が冬に気をつけたいこと
・家族が浴槽で倒れていたときの対処法
1.ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急な室温や気温の変化によって血圧などが大きく揺れ動き、体に害が生じることで、主に入浴時に起こるものを指します。
入浴では次のように血圧が上下します。
・脱衣所で服を脱ぐ:寒さで血管が縮んで血圧が上がり、部屋が寒いほど上昇幅は大きくなります
・湯船に入る:温まって血管が広がり、血圧が下がります
・お湯から出る:水圧が急になくなるため立ちくらみを起こしやすく、熱いお湯ほど血圧が下がった状態が長引くため、上がってしばらくしてから意識を失うこともあります
また、厚生労働省は、入浴中の急死を、体温上昇と血圧低下で意識がもうろうとして湯船から出られなくなり、さらに体温が上がって命に関わる「熱中症」に近い状態と考えています。寒さだけでなく「熱いお湯に長くつかること」も危険だということです。
2.ヒートショックの死亡者数は?【最新データ】
消費者庁の最新の発表によると、令和6年に浴槽で溺れて亡くなった方は7,776人、そのうち65歳以上が7,363人で約95%を占めました。同じ年の65歳以上の交通事故死は2,103人で、その3倍以上にあたります。さらに、救急搬送のデータから推計した入浴中の事故死は年間約1万9000人ともいわれています。
時期は、10月ごろから増え始め、12〜2月には夏の約7倍に達します。まさに今から対策を始めたい季節です。
3.ヒートショックの症状・前兆
入浴前後に次のような症状があれば注意が必要です。
・めまい、立ちくらみ、ふらつき
・ぼーっとする、意識が遠のく
・動悸、胸の痛みや締めつけ感
・手足のしびれ、ろれつが回らない
胸の強い痛み、片側の手足が動かない、意識がはっきりしない場合は、迷わず救急車を呼んでください。
4.ヒートショックが起こりやすい人
・65歳以上の方(特に75歳以上)
・高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈、心臓病のある方
・熱いお風呂、長風呂が好きな方
・脱衣所や浴室に暖房がないご家庭
・飲酒後や食後すぐに入浴する習慣がある方
ただし、もともと元気で自立している方が入浴中に意識を失う例もあり、健康な方も油断はできません。
5.ヒートショック予防|お湯は何度?入浴時間は何分?
目安は、湯温41度以下、つかる時間は10分までです。温度計やタイマーで「見える化」するのもおすすめです。
そのほかのポイントは次のとおりです。
・浴槽から立ち上がるときは、手すりや浴槽のふちにつかまってゆっくりと
・食後すぐや、お酒が残っているときの入浴は避けましょう
・早朝や深夜など、家族の目が届かない時間の入浴は避けましょう
・高齢のご家族の入浴中は、5分おきくらいに声をかけましょう
6.ヒートショック対策|脱衣所・浴室の暖め方
・入浴前に脱衣所を小型の暖房器具で暖めておく
・お湯をためる間、浴槽のふたを開けておき浴室を暖める
・シャワーで浴室の床や壁にお湯をかけておく
・脱衣所にマットを敷き、足元の冷えを防ぐ
「大阪は比較的暖かいから大丈夫」と思われがちですが、注意が必要です。温暖な香川県の医師も、暖かい地域だからこそ浴室やトイレに暖房を置いていない住環境が事故に影響しているかもしれないと指摘しています。
7.血圧の薬を飲んでいる方へ
外来で「血圧の薬を飲んでいてもお風呂は大丈夫?」とよく聞かれます。基本的には入浴して問題ありませんが、薬で血圧を下げている状態に、お湯で血管が広がる作用が重なると、湯上がりに血圧が下がりやすくなることがあります。湯上がりのふらつきが続く方は、診察の際にお伝えください。
大切なのは、自己判断で薬を減らしたり、やめたりしないことです。薬の量やタイミングは医師と相談しながら調整しましょう。また、精神安定剤や睡眠薬を飲んだ後の入浴も危険とされています。
心不全のある方は、肩までつからない半身浴がすすめられています。
8.冬は血圧が上がる?家庭血圧で備える
気温が下がる秋冬は血圧が上がりやすく、特に起床後1〜2時間の血圧が高い「早朝高血圧」は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるとされています。
2025年に改訂された日本高血圧学会のガイドラインでは、年齢を問わず降圧目標が診察室で130/80mmHg未満、家庭で125/75mmHg未満とされました。冬に向けて、朝の家庭血圧を記録しておくことは、ヒートショック対策としても役立ちます。夏より数値が高くなっていないか、ぜひ確認してみてください。
9.家族が浴槽で倒れていたら
浴槽でぐったりしている人を見つけたら、まず浴槽の栓を抜き、できる範囲で救出と応急手当を行いましょう。そして、すぐに119番通報をしてください。無理に一人で引き上げようとせず、周りの人を呼ぶことも大切です。
10.まとめ
ヒートショックは、寒い脱衣所と熱いお湯による血圧の急な変化が引き起こす、冬に多い事故です。「浴室を暖める」「41度以下・10分まで」「家族の声かけ」で多くは防ぐことができます。
次のような方は、一度ご相談ください。
・入浴後にふらつきや動悸を感じることがある
・冬になると家庭血圧が高くなる
・高血圧や不整脈を指摘されたが、そのままになっている
くげクリニックでは、心電図や24時間ホルター心電図、心臓超音波検査などで心臓の状態を確認し、冬に向けた血圧管理をご一緒に考えます。南海本線「石津川」駅から徒歩約1分、予約なしでも受診いただけます。





