急性胃腸炎とは
急性胃腸炎とは、突然、胃や腸に炎症が起きることで、主に嘔吐・下痢・腹痛・発熱などの症状が現れる病気です。原因はさまざまで、ウイルス・細菌などによって引き起こされます。
胃腸の粘膜に炎症が起こると、体は異物を排除しようとして嘔吐や下痢を起こします。これは体の自然な防御反応であり、多くの場合は数日で回復しますが、特に子どもや高齢者では脱水症状に注意が必要です。

急性胃腸炎の原因
1.ウイルス感染
もっとも多い原因で、ノロウイルスやロタウイルスなどが代表的です。感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが手や食品を介して口から体内に入り、感染します。冬に流行することが多く、学校や介護施設などで集団感染が起こることもあります。
2.細菌感染
食中毒による胃腸炎の原因として多く、サルモネラ菌、カンピロバクター、大腸菌(O157など)が知られています。加熱不十分な肉や汚染された水が原因になることが多く、夏場に増加します。
3.その他の原因
- 薬剤(抗生物質など)による腸内環境の乱れ
- ストレスや疲れによる自律神経の乱れ
- 暴飲暴食や脂っこい食事
原因によって治療法や注意点が異なるため、症状が強い場合は早めに医療機関を受診しましょう。
ノロウイルスとは
ノロウイルスは、ウイルス性急性胃腸炎の代表的な原因ウイルスです。非常に感染力が強く、少量のウイルスでも感染が成立します。特に冬に多く発生し、学校や家庭、介護施設での集団感染が問題となります。

ノロウイルスの特徴
- 潜伏期間:1~2日
- 主な症状:突然の嘔吐、下痢、腹痛、微熱
- 症状の持続期間:1~3日
- 感染経路:経口感染(手指や食べ物を介して口に入る)
- 対症療法が中心
- 注意点
- ノロウイルスに感染した後も、1週間程度は便にウイルスが排出されるため、トイレ後やおむつ交換後は必ず石けんで手洗いを行いましょう。
ロタウイルスとノロウイルスの違い
特徴 | ノロウイルス | ロタウイルス |
---|---|---|
流行時期 | 主に冬(11月~3月) | 冬~春(1月~4月) |
主な感染者層 | 年齢問わず(大人も子どもも) | 主に乳幼児 |
潜伏期間 | 1~2日 | 1~3日 |
主な症状 | 嘔吐・下痢・腹痛・微熱 | 水のような下痢・嘔吐・高熱 |
重症化のリスク | 比較的低い(ただし脱水に注意) | 重症化しやすい(特に乳児) |
急性胃腸炎の症状
- 突然の吐き気、嘔吐
- 水のような下痢(1日数回~十数回)
- 腹痛(おへその周りが多い)
- 発熱(37~38℃程度が多いが、稀に高熱も)
- 食欲低下
- 全身のだるさ
症状の出方は個人差があり、嘔吐が強く下痢は軽い場合や、反対に下痢が主で嘔吐が少ないケースもあります。特に注意したいのが「脱水症状」です。嘔吐と下痢によって体の水分や電解質が失われると、命に関わることもあるため、症状が強い場合は医療機関での診察を受けましょう。
急性胃腸炎の検査
急性胃腸炎の診断は、基本的に問診と診察を中心に行われます。

問診で確認する内容
- 症状の始まりや経過
- 吐き気・下痢の回数と性状
- 発熱の有無
- 周囲に同じ症状の人がいるか
- 食事内容や外食歴
- 必要に応じて行う検査
-
- 便の迅速検査:ウイルス性胃腸炎(特にノロやロタ)の判別
- 血液検査:脱水の程度や炎症の有無を確認
- 腹部の触診:圧痛の有無を確認し、他の疾患との鑑別
通常、軽症であれば検査を行わず経過観察することもありますが、症状が重い・長引く・血便があるなどの場合には追加の検査が必要になることがあります。
急性胃腸炎の時に自宅で行うべきこと
急性胃腸炎の治療の基本は「安静」と「水分補給」です。お薬に頼りすぎず、自然に回復する力を助けるような対応が大切です。

1.水分補給をしっかりと行う
嘔吐が治まってきたら、少量ずつこまめに水分を摂取します。
おすすめは経口補水液(OS-1など)やスポーツドリンク(薄めたもの)。
一度に大量に飲むと再び吐いてしまうため、ティースプーン1杯からスタート。
吐き気が強いときは、口を湿らせる程度でもOK。
2.食事の再開は様子を見ながら
嘔吐や下痢が落ち着いたら、まずはおかゆ・うどん・バナナ・すりおろしリンゴなど消化の良い食べ物から始めましょう。
牛乳や脂っこいもの、甘いお菓子、生野菜は避けてください。
食欲が出ない時は無理に食べさせず、水分だけでも構いません。
3.清潔を保ち、感染拡大を防ぐ
嘔吐物や便の処理時は使い捨て手袋とマスクを使用。
処理後は塩素系消毒液で拭き取り、しっかりと手洗い(30秒以上)を行います。
タオルや食器は家族と共有しないようにし、洗濯や消毒を徹底しましょう。
4.室内を安静な環境にする
無理に動かさず、静かに寝かせておくことが大切です。
子どもは、眠っている間に脱水が進むことがあるため、こまめな様子観察を。
5.入浴は体力と相談しながら
発熱や脱水があるときは控えましょう。
汗をかいて気持ち悪い場合は、蒸しタオルで体を拭くだけでもOKです。
急性胃腸炎は何日で治る?
急性胃腸炎の回復までの日数は、原因となるウイルスや細菌の種類、個人の体力、年齢、症状の重さなどによって異なります。

ウイルス性胃腸炎の場合
- 症状のピークは1~2日間程度
- 突然の嘔吐や下痢、発熱が現れます。多くの場合、2~3日で症状は軽くなります。
- 全体の回復には4~5日間ほど
- 下痢が続く場合でも、食欲が戻り、水分がしっかり摂れるようになれば回復に向かっているサインです。
- ウイルス排出は1週間ほど続く
- 症状が治まっても、便中にウイルスが含まれていることがあります。家庭内感染を防ぐため、手洗いや消毒を1週間は徹底するようにしましょう。
細菌性胃腸炎の場合
- 症状の持続が長め(数日~1週間)
- 発熱が高く、下痢が長引く傾向があります。抗菌薬が必要なケースもあり、医師の指示のもとで治療を受ける必要があります。
- 回復までに1週間以上かかることも
- 脱水や栄養不足に注意しながら、自宅療養や通院が必要となる場合があります。
高齢者・乳幼児の場合
回復に時間がかかる傾向があり、数日以上かかることもあります。
体力が落ちやすく、脱水になりやすいため、医療機関での適切な対応が重要です。
目安としては「軽症なら2~3日」「中等度で3~5日」「重症で1週間以上」と考えられますが、症状が続く場合や悪化する場合には、迷わず医師の診察を受けてください。
脱水の症状と予防方法
急性胃腸炎で最も注意すべき合併症が「脱水症状」です。嘔吐や下痢で水分と塩分(電解質)が大量に失われることで、体が正常に機能しなくなります。

脱水の主な症状
- 軽度~中等度の脱水
-
- 口の中が乾いている
- 尿の量が少ない、色が濃い
- 皮膚のハリがない(つまんでも戻りにくい)
- ぼーっとする、元気がない
- めまいや立ちくらみ
- 重度の脱水(危険な状態)
-
- 意識がもうろうとする
- 立てない、ふらつく
- 泣いても涙が出ない(乳児)
- 頻脈、血圧低下
- 失神、けいれん
特に小さなお子さんや高齢者では、脱水が急激に進行することがあるため、注意が必要です。
脱水の予防方法
1.経口補水液(ORS)を使用する
市販のOS-1などの経口補水液を用いると、失われた水分と電解質をバランスよく補給できます。
吐き気がある時は、スプーン1杯から少量ずつ。
2.スポーツドリンクの活用(薄めて使う)
吐き気や軽度の脱水には、スポーツドリンクも一時的に使えます。ただし、糖分が多いため2~3倍に薄めて使用してください。
3.水やお茶だけでは不十分
水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質も必要です。水やお茶ばかりを飲んでいると、低ナトリウム血症(電解質異常)を起こすこともあります。
4.食事からの補給も大切
食べられるようになったら、おかゆ、うどん、すりおろしリンゴなどで少しずつ栄養と水分を補いましょう。
5.体調が悪化したら早めに医療機関へ
「水分が全く摂れない」「尿が出ていない」「ぐったりしている」などの症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。
急性胃腸炎についてよくある質問
- 急性胃腸炎は人にうつりますか?
- はい。特にウイルス性のものは感染力が強く、手洗いや便・嘔吐物の処理が不十分だと家庭内でも感染が広がる可能性があります。
- 嘔吐や下痢が治まったらすぐに学校・仕事へ行ってもいい?
- 目安としては症状が完全に治まってから48時間程度は安静にすることをおすすめします。職場や学校により登校・出勤停止期間が定められている場合もあります。
- 急性胃腸炎は薬で治せますか?
- ウイルス性の場合は特効薬がないため、対症療法(吐き気止めや整腸剤など)が中心です。細菌性の場合は、抗菌薬を使用することもあります。
- 熱があるときは解熱剤を使ってもいい?
- 高熱でつらいときは解熱剤を使ってもよいですが、嘔吐や下痢がひどいときは内服が難しいこともあるため、医師の判断を仰ぎましょう。
- どんな食事を与えればいいですか?
- 回復期にはおかゆ、うどん、バナナ、すりおろしリンゴ、湯豆腐など、消化の良いものを少量ずつ与えましょう。乳製品や脂っこい食事は避けてください。
- 子どもが嘔吐したとき、すぐ病院に行くべき?
- 1回だけの嘔吐で元気があるなら様子を見ても大丈夫です。ただし何度も吐く、水分が取れない、元気がない場合は早めに受診を。
- ノロウイルスはワクチンで予防できますか?
- ノロウイルスに対するワクチンは現在のところ存在しません。感染予防は、手洗い・消毒・感染者との接触回避が基本です。
- 嘔吐や下痢が出たらすぐ薬を飲ませた方がいい?
- 必ずしも薬が必要なわけではありません。体が異物を出そうとしている反応でもあるため、まずは安静と水分補給を優先しましょう。
- 症状がよくなった後、どれくらいで食事を再開していい?
- 吐き気や下痢が落ち着き、水分がしっかり取れるようになったら、食事を再開して構いません。最初は少量から、消化の良いものを選びましょう。
- くげクリニックでは急性胃腸炎の診察は可能ですか?
- はい、当院では急性胃腸炎の診察を行っております。症状や経過に応じて、必要な検査・処方・アドバイスを丁寧に行います。お子さまから大人の方まで安心してご相談ください。
堺市西区で急性胃腸炎にお困りの方は、「くげクリニック」までお気軽にご相談ください。地域のかかりつけ医として、的確な診察とわかりやすい説明で、皆さまの健康をサポートいたします。