心不全とは
心不全とは、心臓が全身に十分な血液を送り出せない状態を指します。心不全になると、酸素や栄養が行き届かず、さまざまな臓器の機能が低下します。高齢化や生活習慣病の増加に伴い、心不全の患者数は年々増加しています。
心不全は急性心不全と慢性心不全に分かれ、急性は突然の症状の悪化が特徴です。慢性心不全は長期間にわたって進行し、早期に適切な治療を行うことで症状を抑えながら生活の質(QOL)を維持することが可能です。
また、慢性心不全は心臓のポンプ機能の低下により、次の2つのタイプに分類されます。

慢性心不全の種類
- ● 収縮不全型心不全(HFrEF)
- 心筋の収縮力が低下し、血液を十分に送り出せない状態。
主な原因:心筋梗塞、心筋症、高血圧など- ● 拡張不全型心不全(HFpEF)
- 心臓が硬くなり、血液を十分に受け取れない状態。
主な原因:加齢、高血圧、糖尿病など
心不全の重症度分類(NYHA分類)
心不全の症状の重さを示す指標として、「NYHA(ニューヨーク心臓協会)分類」があります。
分類 | 症状の程度 |
---|---|
Ⅰ度 | 通常の活動に制限なし。日常生活での疲れや息切れはなし。 |
Ⅱ度 | 軽度の制限あり。階段や坂道を登ると息切れを感じる。 |
Ⅲ度 | 日常生活でも息切れがあり、活動に制限が必要。 |
Ⅳ度 | 安静時でも症状が出現し、日常生活が困難。 |
※NYHA分類〈New York Heart Association functional classification〉
心不全の原因となる病気
心臓や血管に負荷がかかったり、心臓に異常があったりする場合に心不全を起こしやすくなります。
高血圧
高血圧の場合、高い血圧がかかった状態の血管に血液を送り出さなければならず、その分心臓にも負担がかかります。長期間心臓に負荷がかかる状態になるため、心筋が分厚く肥大していき、心不全の原因となることがあります。
冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
冠動脈疾患とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素と栄養を供給する冠動脈が狭くなったり、完全に詰まったりすることで、心筋への血流が不足する病気の総称です。冠動脈が狭窄すると狭心症を引き起こし、閉塞すると心筋梗塞となり、重篤な状態に陥ります。
心筋への血流が不足すると、ポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなります。狭心症や心筋梗塞を繰り返すと、心筋が徐々にダメージを受け、心不全へと進行する可能性が高くなります。

心臓弁膜症
心臓弁膜症とは、心臓にある4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)が正常に機能しなくなる病気です。弁は血液が一方向に流れるように開閉する役割を担っていますが、加齢や感染症、リウマチ熱などの影響で異常をきたすことがあります。弁膜症は主に「弁狭窄症」と「弁閉鎖不全症」の2種類に分類され、それぞれが心臓に異なる負担をかけることで心不全へと進行する可能性があります。
糖尿病
糖尿病は、血液中の血糖値が慢性的に高い状態が続く病気で、1型糖尿病(自己免疫が原因でインスリンが分泌されない)と2型糖尿病(生活習慣や遺伝の影響でインスリンの作用が低下する)の2種類があります。特に2型糖尿病は動脈硬化や心血管疾患のリスクを高める要因となり、心不全との関連が深いとされています。

心不全の症状
心不全の症状は、軽度・中等度・重度の3段階に分けて考えられます。

1. 軽度(初期症状)
- 階段や坂道での息切れ
- 軽い動悸
- 夜間の頻尿
2. 中等度(進行期)
- 安静時でも息苦しさを感じる
- 足や手のむくみ
- 食欲不振、体重減少
3. 重度(末期症状)
- 寝ている間の呼吸困難(起座呼吸)
- 顔や手足の冷え
- 意識障害や倦怠感
受診のタイミング
- 息切れが悪化している
- むくみがひどくなってきた
- 夜間の呼吸困難が増えている
などの症状が現れた場合は、早めに受診を検討しましょう。
心不全の診断・検査
身体診察
聴診器を使って心音を確認するほか、むくみの有無などを観察します。

血液検査
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)などの数値が心不全の重症度を示します。
画像検査
- 胸部X線:心臓の拡大や肺うっ血を確認
- 心エコー:心臓の動きや血流の異常を確認
心不全の治療方法
薬物療法
- 利尿剤(体内の余分な水分を排出)
- β遮断薬(心拍数を安定させる)
- ACE阻害薬(血圧を下げ、心臓の負担を軽減)
- ARB(血圧を下げ、心臓の負担を軽減)
- ARNI(血圧を下げ、心臓の負担を軽減)
生活習慣の改善
- 塩分制限(1日6g以下を目標)
- 適度な運動(医師の指導のもとで行う)
- 禁煙・禁酒
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外科的治療
- ペースメーカーの植え込み
- 心臓移植(重症例の場合)
心不全の予防方法・気を付けること
- 適切な体重管理:BMIを適正範囲に維持する。
- 食事の工夫:塩分・脂質を控え、野菜や魚を積極的に摂取。
- 適度な運動:ウォーキングや水中運動など、心臓に負担の少ない運動を心がける。
- 禁煙と節酒:喫煙や過度の飲酒は心臓への負担を増やします。
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心不全についてよくある質問
- 心不全は完治する病気ですか?
- 完治は難しいですが、適切な治療で症状をコントロールできます。
- 心不全の患者が避けるべき食べ物は?
- 塩分の多い加工食品や、脂肪分の多い食事は控えましょう。
- 心不全の治療にはどのくらいの期間が必要ですか?
- 症状によりますが、基本的に長期間の治療が必要です。
- 心不全患者の運動はどの程度が適切ですか?
- 軽いウォーキングなど、無理のない範囲で行いましょう。
- 心不全の兆候を見逃さないためには?
- 息切れやむくみなど、軽微な症状でも早めに受診してください。